2020/08/07
なぜ、生前贈与は相続税対策になるのか?
「生前贈与」虎の巻①
「生前贈与」は
もっともポピュラーな相続税対策です。
お仕事のなかで
相続税対策として生前贈与のご提案をしたり
お客さまからご質問を受ける機会も多いでしょう。
しかし
生前贈与についてきちんと理解し
自信を持ってお話をされている方は
少ないのではないでしょうか?
そこで
この「生前贈与」虎の巻は
そういった方が
自信を持って
生前贈与のお話ができるようになる
ことを目的としています。
このブログが
お客さまとよりよい関係を築き
ご自身のビジネスにつながる
きっかけになればうれしく思います。
本日はその第1回目として
「なぜ、生前贈与は相続税対策になるのか?」
というお話をします。
「そんなことは知っているよ」
という方も多いと思います。
しかし
ここがきちんと理解できているかいないかで
生前贈与全体に対する理解度が変わってきます。
ですので
しっかり押さえていただきたいと思います。
まず、お話に入る前に
「相続」
「生前贈与」
「相続税対策」
という言葉の定義をしておきましょう。
言葉の定義があいまいだと
しっかりした理解に結びつかない
場合があります。
ですので
あえて最初に定義づけしておきます。
まず
「相続」はこのように定義します。
「自分が亡くなった時に
自分の財産をタダで誰かにあげること」
そして
「生前贈与」はこのように定義します。
「自分が生きている時に
自分の財産をタダで誰かにあげること」
自分の財産をタダであげる
という意味では同じです。
しかし、あげる時点、
タイミングが違うということです。
誰かに財産をタダであげようとすれば
相続か贈与、どちらかしかありません。
そして、それぞれに税金がかかります。
亡くなったときにあげれば相続税
生きているうちにあげれば贈与税
相続税対策では、
どちらを選択すればトータルの税金が安くなるのか
ということがポイントになります。
ここで
「相続税対策」の定義もしておきましょう。
「相続税対策」はこのように定義します。
「相続税と贈与税のトータルの税金をへらすこと」
相続税対策は
相続税と贈与税のトータルで見ていかないと
意味がないということです。
相続税と贈与税は似たような税金です。
共通するのは、
「誰かから財産をタダでもらったときに、もらった人が払う税金」
ということです。
亡くなったときにもらえば相続税
生前にもらえば贈与税です。
では
もしいま相続税しかないとすると
どうでしょうか。
自分が亡くなるときに財産を残したら相続税がかかる。
でも
亡くなる前に財産を子供に全部渡してしまえば
すなわち生前贈与をして
自分の財産をなくしてしまえば
相続税はかからない、ということになります。
税金を払うことなく財産を渡していけるわけです。
確かに相続税しかなければそうなります。
でも
それでは税務署は面白くないですよね。
それは面白くないから
「生前贈与した場合も税金をかけますよ」
となります。
それが贈与税です。
そういう成り立ちがありますので
ざっくり言うと
相続税より贈与税の方が高く設定されています。
贈与税は
相続税をかけるためにある税金です。
しかし
贈与税のほうが安ければ
みんな生前贈与して
相続税を払わないで済むようにするでしょう。
それでは元も子もありません。
贈与税が存在する意味がなくなってしまいます。
そういう理由で、相続税より
贈与税のほうが高く設定されているわけです。
ここまでお話して
「おかしいな?」
と思われた方も
いらっしゃるのではないでしょうか。
相続税より贈与税が高いなら
生前贈与をせずに
相続税を払った方がトクなはずです。
ではなぜ、生前贈与が相続税対策になるのか?
理由は
それぞれの計算方法や税率の差にあります。
しかし、一番の理由は
「贈与税には非課税ワクがある」からです。
税金には色々な非課税ワクがあります。
贈与税にも非課税ワクがあります。
贈与税では、もらった人ベースで
年間110万円までなら非課税です。
つまり
1月1日から12月31日までの間で
誰かからタダでもらった財産の合計額が
110万円以下であれば
贈与税はかからないということです。
そうであれば、相続税がかかる人にとっては
110万円以下の生前贈与をした方が絶対トク
ということになります。
なぜなら
相続税がかかる人は
財産を残せばその残した分について
必ず相続税がかかるからです。
一部でも
110万円以下で生前贈与することができれば
その部分は税金なしで財産を渡していけます。
ここで気を付けてほしいのは
そもそも相続税がかからない人にとって
相続税対策としての生前贈与は意味がない
ということです。
相続税にも基礎控除という非課税ワクがあります。
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
です。
亡くなった方の財産額が
それ以下であれば相続税はかかりません。
そもそも
相続で渡してしまえば税金がかからないのですから
それ以上
トータルの税金を減らしようがありません。
お気持ちの上で
生前にお金を渡してあげたいのであれば
110万円以下の贈与にして
贈与税がかからないようにしましょう。
ちなみに
この「年間110万円」という非課税ワクは
キャリーオーバーされません。
「今年は非課税ワクを使わなかったから
来年は220万円非課税ワクがある」
とはならないわけです。
毎年使い切らなければ、リセットされます。
したがって、毎年コツコツと
110万円以下の生前贈与をすることが
相続税を減らすことにつながるわけです。
贈与税の非課税ワクのことは
よくご存じの方が多いと思います。
確かに
110万円の非課税ワクを活用することは非常に有効です。
では
110万円以下の贈与さえしていればすべてOKか?
必ずしもそうではありません。
ケースによっては
110万円以下の贈与が効率的ではないこともあります。
では
どういうやり方で贈与していくのが効率的なのか?
このあたりが生前贈与の面白いところです。
そして
考え方さえわかれば誰でもできます。
生前贈与は「技術」なのです。
次回はそんなお話をしていきます。
最後までお読みいただき
ありがとうございました!
税理士 藤原由親
1.知ってるつもりの「生前贈与」
「生前贈与」は
もっともポピュラーな相続税対策です。
お仕事のなかで
相続税対策として生前贈与のご提案をしたり
お客さまからご質問を受ける機会も多いでしょう。
しかし
生前贈与についてきちんと理解し
自信を持ってお話をされている方は
少ないのではないでしょうか?
そこで
この「生前贈与」虎の巻は
そういった方が
自信を持って
生前贈与のお話ができるようになる
ことを目的としています。
このブログが
お客さまとよりよい関係を築き
ご自身のビジネスにつながる
きっかけになればうれしく思います。
本日はその第1回目として
「なぜ、生前贈与は相続税対策になるのか?」
というお話をします。
「そんなことは知っているよ」
という方も多いと思います。
しかし
ここがきちんと理解できているかいないかで
生前贈与全体に対する理解度が変わってきます。
ですので
しっかり押さえていただきたいと思います。
2.「相続」「生前贈与」「相続税対策」
まず、お話に入る前に
「相続」
「生前贈与」
「相続税対策」
という言葉の定義をしておきましょう。
言葉の定義があいまいだと
しっかりした理解に結びつかない
場合があります。
ですので
あえて最初に定義づけしておきます。
まず
「相続」はこのように定義します。
「自分が亡くなった時に
自分の財産をタダで誰かにあげること」
そして
「生前贈与」はこのように定義します。
「自分が生きている時に
自分の財産をタダで誰かにあげること」
自分の財産をタダであげる
という意味では同じです。
しかし、あげる時点、
タイミングが違うということです。
誰かに財産をタダであげようとすれば
相続か贈与、どちらかしかありません。
そして、それぞれに税金がかかります。
亡くなったときにあげれば相続税
生きているうちにあげれば贈与税
相続税対策では、
どちらを選択すればトータルの税金が安くなるのか
ということがポイントになります。
ここで
「相続税対策」の定義もしておきましょう。
「相続税対策」はこのように定義します。
「相続税と贈与税のトータルの税金をへらすこと」
相続税対策は
相続税と贈与税のトータルで見ていかないと
意味がないということです。
3.相続税しかなかったら?
相続税と贈与税は似たような税金です。
共通するのは、
「誰かから財産をタダでもらったときに、もらった人が払う税金」
ということです。
亡くなったときにもらえば相続税
生前にもらえば贈与税です。
では
もしいま相続税しかないとすると
どうでしょうか。
自分が亡くなるときに財産を残したら相続税がかかる。
でも
亡くなる前に財産を子供に全部渡してしまえば
すなわち生前贈与をして
自分の財産をなくしてしまえば
相続税はかからない、ということになります。
税金を払うことなく財産を渡していけるわけです。
確かに相続税しかなければそうなります。
でも
それでは税務署は面白くないですよね。
それは面白くないから
「生前贈与した場合も税金をかけますよ」
となります。
それが贈与税です。
そういう成り立ちがありますので
ざっくり言うと
相続税より贈与税の方が高く設定されています。
贈与税は
相続税をかけるためにある税金です。
しかし
贈与税のほうが安ければ
みんな生前贈与して
相続税を払わないで済むようにするでしょう。
それでは元も子もありません。
贈与税が存在する意味がなくなってしまいます。
そういう理由で、相続税より
贈与税のほうが高く設定されているわけです。
4.なぜ、生前贈与は相続税対策になるのか?
ここまでお話して
「おかしいな?」
と思われた方も
いらっしゃるのではないでしょうか。
相続税より贈与税が高いなら
生前贈与をせずに
相続税を払った方がトクなはずです。
ではなぜ、生前贈与が相続税対策になるのか?
理由は
それぞれの計算方法や税率の差にあります。
しかし、一番の理由は
「贈与税には非課税ワクがある」からです。
税金には色々な非課税ワクがあります。
贈与税にも非課税ワクがあります。
贈与税では、もらった人ベースで
年間110万円までなら非課税です。
つまり
1月1日から12月31日までの間で
誰かからタダでもらった財産の合計額が
110万円以下であれば
贈与税はかからないということです。
そうであれば、相続税がかかる人にとっては
110万円以下の生前贈与をした方が絶対トク
ということになります。
なぜなら
相続税がかかる人は
財産を残せばその残した分について
必ず相続税がかかるからです。
一部でも
110万円以下で生前贈与することができれば
その部分は税金なしで財産を渡していけます。
ここで気を付けてほしいのは
そもそも相続税がかからない人にとって
相続税対策としての生前贈与は意味がない
ということです。
相続税にも基礎控除という非課税ワクがあります。
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
です。
亡くなった方の財産額が
それ以下であれば相続税はかかりません。
そもそも
相続で渡してしまえば税金がかからないのですから
それ以上
トータルの税金を減らしようがありません。
お気持ちの上で
生前にお金を渡してあげたいのであれば
110万円以下の贈与にして
贈与税がかからないようにしましょう。
ちなみに
この「年間110万円」という非課税ワクは
キャリーオーバーされません。
「今年は非課税ワクを使わなかったから
来年は220万円非課税ワクがある」
とはならないわけです。
毎年使い切らなければ、リセットされます。
したがって、毎年コツコツと
110万円以下の生前贈与をすることが
相続税を減らすことにつながるわけです。
5.110万円以下の贈与ですべてOK?
贈与税の非課税ワクのことは
よくご存じの方が多いと思います。
確かに
110万円の非課税ワクを活用することは非常に有効です。
では
110万円以下の贈与さえしていればすべてOKか?
必ずしもそうではありません。
ケースによっては
110万円以下の贈与が効率的ではないこともあります。
では
どういうやり方で贈与していくのが効率的なのか?
このあたりが生前贈与の面白いところです。
そして
考え方さえわかれば誰でもできます。
生前贈与は「技術」なのです。
次回はそんなお話をしていきます。
最後までお読みいただき
ありがとうございました!
税理士 藤原由親